皐月賞(2)
それでは皐月賞の行われる中山の芝2000メートルはどんなコースなのだろうか。
皐月賞の行われる中山芝2000メートルのスタート地点は4コーナーを曲がり終わった直後の直線から。ここをスタートした後、スタンドからの大歓声を受けながらホームストレッチを通り抜け、1コーナーへ突入。その後、内回りをグルリと一周し、勝負どころの4コーナーを過ぎて最後の直線、そしてゴールとなる。ちなみに、この最後の直線は約310メートルと短い上に、2.3メートルの急坂が潜んでいる。中山の内回りコースは1700メートル弱でローカルよりも少々大きいぐらいの大きさであるため、各コーナーの角度は厳しい。また、コース幅は内側にラチをつけないAコースで最大32メートルとコース幅が狭いので馬がバラけず殺到するため、肝心なところで前が詰まったり、馬同士がぶつかり合ったりするなど紛れが多くなる。この影響で、コーナーで後手を踏むような不器用な馬や、ヨレたりササったりするような真っ直ぐ走れない馬、ズブイ馬、揉まれ弱い馬などには非常に厳しいコースといえるだろう。
皐月賞はそんなコースで行われるのである。
前哨戦となった弥生賞も同じコースで行われたが、如何せん、出走頭数が10頭という小頭数であった。フルゲートになると思われる本番に備えたレースシチュエーションだったかと言うと不安が残る。ディープインパクトは同じ距離・コースで行われた弥生賞で快勝はしたが、弥生賞を勝って、または2着になって皐月賞で敗れた諸先輩方は多い。
そんなコースで行われる皐月賞であるから、出来るだけ不利を受けない前で競馬をした方が良いのはもちろんで、過去10年の皐月賞を見てみると、ビワハヤヒデやジェニュイン、キングヘイロー、サニーブライアン、セイウンスカイ、アグネスタキオン、タイガーカフェ、ダイワメジャーなど、先行した馬が多数連に絡んでいる。2回連続開催の最終日だと言うこを考えるとセイウンスカイの時まであったグリーンベルトや近年の特殊な馬場を差し引いても多い。はっきり言ってしまえば皐月賞において人気の先行馬は殆ど崩れた事がないのである。過去10年で1995年の1番人気ダイタクテイオーと1996年の2番人気サクラスピードオーぐらいかだろう。
ああ、多頭数でゴチャつきやすいコースに先行馬が強いレース傾向・・・。これらを考えるとディープインパクトの脚質や経験では皐月賞で厳しい?のだろうか。
と、ここまで皐月賞の行われるコースや先行馬が強い事などを書いてきたが「後ろから競馬をする馬は不利なのだろうか?」と言うとそうでもない。テイエムオペラオーやエアシャカール、ネオユニヴァースなど、後方で競馬をしてもしっかりと勝っている馬がいるように、後ろで競馬をするのは決して不利というわけではないのだ。
ただ、皐月賞は荒れる事がある。
比較的堅い決着になる皐月賞で「荒れた」と言えばサニーブライアンが勝った1997年の皐月賞やノーリーズンが勝った2002年の皐月賞だが、その影にはメジロブライトやタニノギムレットなどの「負けた人気馬」がいる。この2頭はどちらも追い込み馬。つまり皐月賞が荒れる時は人気の追い込み馬が追い込みきれなかった時である。皐月賞ではテイエムオペラオーやエアシャカール、ネオユニヴァースなど後方で競馬をしても勝つ馬がいる一方、メジロブライトやタニノギムレットなど後方で競馬をしても人気を背負って連に絡めなかった馬がいる(写真はスプリングS出走時のネオユニヴァース)。彼らにはどのような違いがあったのだろう。ここにディープインパクトが勝てる・勝てないのヒントが眠っているような気がするが・・・。
その違いは「単に直線だけで追い込むか、徐々に捲るか」にあると思われる。
当たり前だが、追い込み馬は後ろから競馬をする。となると、勝負どころで外に出すか・内を突くかという選択肢があるわけだが、馬が殺到している内を突くの進路が空かない可能性が高い。となると、不利を被って負けるよりも、距離損をしてもいいから実力を出し切れる外を突く。が、ここで中山の小回りで直線の短さが効いてくる。小回りであるがために勝負どころで普通に外を回って追い出したのではスピードが殺されてしまう。
多頭数が出走するレースでスタートした後の直線が長いコースは、位置取りを決めるためにペースが速くなりやすい。しかし、皐月賞に限定してみると、スタート直後に急坂を登らなくてはいけない事や若駒と言う事もあるのか、ペースは1000メートル通過が59秒~60秒の前後で、思ったほど速くはならないようだ。このようなペースだとスピードを殺されるのを嫌って直線に入ってから追い出したのでは前をつかまえられない。
このため、皐月賞での追い込み馬は4コーナーのカーブ手前で加速しながら斜めに進路を取り、直線に入る時にスピードを殺さないような〝マクリ〟を打つ必要があるのだ。皐月賞を勝ったテイエムオペラオーは後方14番手で競馬をしていたが、徐々に仕掛け4コーナーで8番手につけていた。それに比べて3着に負けてしまったタニノギムレットは後方13番手で勝負どころでも14番手。これでは届かないのも無理はない。皐月賞は単に追い込むのでなく、捲くれる脚を持つ馬でないと勝ち負けできないのである。
後方で競馬をする馬が捲らないと勝てない事は武豊騎手が皐月賞で騎乗したエアシャカール、スペシャルウィーク、サイレントディール、アドマイヤベガなどの殆どの馬で捲くりを打つ競馬をしている事でも分かるだろう。確かにディープインパクトは今まで3戦が全て10頭以下と小頭数でのレースしか経験していない。けれど、彼は長く良い脚の使えて捲りが打てるため、皐月賞でも勝ち負けできるのではないか?と私は考える。
ただ、そこで重要な問題が一つ残されている(つづく)。
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