セントライト記念

NHKマイルCとダービーを制覇したディープスカイが頭一つ抜け出す世代。そのディープスカイも神戸新聞杯の結果によっては天皇賞へ進む可能性がある。最後の1冠・菊花賞を誰が戴冠するか。そんな菊花賞の出走権を賭けて争われたトライアル・セントライト記念だったが、そんなレースを制したのはダイワワイルドボアだった。

~勝ったダイワワイルドボアは~

Blog255弱くなったり強くなったりを繰り返しながら降り続く雨と、そんな雨を避ける傘の花の中で行われた今年のセントライト記念。1コーナーカーブの途中でリノーンリーズンが心臓麻痺により死亡・転倒するという事故が起こり、それに多頭数が巻き込まれるという波乱含みの一戦となったが、スタート直後に先行するネオスピリッツやシルクマンハッタン、マイネルチャールズを直後で見る形で競馬を進めていたダイワワイルドボアは、そんな事故の影響をギリギリのところで受けない6~7番手。ここで上手に折り合うと、3コーナー手前で早前に動き出したマイネルチャールズを見ながらジワリジワリと前に進出し、最後の直線へ。目の前には先に抜け出したマイネルチャールズと、それに並びかけようとするノットアローンの2頭。これを目標に鞍上の北村宏騎手に激しく追われれば、まるで大蛇が獲物を捕らえるかのごとく舌をチロチロと出しながら一完歩毎ににじり寄り、ゴール直前で一気に丸の飲みにしてしまった。

Blog256馬主の大城氏に上原調教といえば皐月賞に天皇賞・秋、安田記念などG1を5つ制覇したダイワメジャーが思い浮かぶが、このダイワワイルドボアも同じコンビ。ワイルドボアは「この世代で期待している馬」として名を挙げるほど期待する大城氏だったが、そんな氏の期待とは裏腹に、2番人気に支持された新馬戦では550キロという巨体を持て余して8着、次走の未勝利戦でも6着と掲示板に載ることがきず。3戦目でなんとか未勝利を脱出するものの、次のクラスである500万下では2着・6着と勝ちあぐね、背伸びして出走したスプリングSでは14着と大敗するなど、結果を出せずにいた。そんなボアが夏を越して重賞を制覇。ダイバーシティの末脚などを見ると、確かに今回のレースにおいて事故の影響を受けなかったのは大きいところだが、春にはまったく話しにならなかった重賞という舞台で、中山得意の皐月賞1番人気馬マイネルチャールズを外から差し切ったのは紛れもない成長の証し。素質の一端を開花させた愛馬を喜び、ウイナーズサークルで北村宏騎手と握手をしていた手を力強く何度も上下させる大城氏が印象的だった。

面白いのはワイルドボアの馬体重。デビュー当時は2歳馬とは思えぬ550キロで登場。しかし、これがレースをする毎に減っていき、8戦目となったプリンシパルSで518キロ。これを考えると上原調教師も春先はボアの適正な体重を測りかねていたのではないか。それが食の落ちやすい夏場で10キロ戻すと、今回は526キロで登場し優勝。体重の推移と結果を踏まえると、単に大きかった春先とは違って身が伴ってきた事が推測できる。父アグネスタキオンに母父ヌレイエフという血統構成から2000メートル前後が適距離だろうとは思うので、菊花賞となると考え込んでしまうが、ボアが持つ潜在的な素質についてはダイワメジャーにダイワスカーレットなど、近年、最も勢いのある馬主の1人である大城氏のお墨付きをもらっているだけに、成長次第で血の制約さえも凌駕する可能性もある。今後、どこまで昇りつめるか楽しみな1頭だ。


~2着になったマイネルチャールズは~

中山で5戦して3勝2着2回というパーフェクト連対を誇る中山マイスター・マイネルチャールズ。初の古馬との混合戦となった前走の札幌記念では夏の上がり馬を抑えて2番人気に支持されるも6着に沈んだが、今回のセントライト記念は、叩き2戦目とコース適性、3歳限定戦などを考慮されて1番人気に支持された。結果は2着。最後はワイルドボアの末脚の前に屈する形となったものの、ノットアローンに並びかけられても抜かせない勝負根性は健在で、春の実績馬としての面目を保った。この結果を見て出てくるのは

うーん。やはり中山は走る

Blog257という感想。「なぜ中山は走るのか」と言えば、中山はコース形態的に中間がスローになっても上がり勝負にならないという、チャールズにとって得意の流れになりやすいからだろう。前走の札幌記念はスタート直後からコンゴウリキシオーがひっぱり、中間もペースは落ちない淀みのない流れ。ペースが上がり出す前に捲り気味動き出す戦法を得意としているチャールズにとって自信の1000メートルの通過が59秒8ではいかにも厳しく、最後の直線に入る頃には余力は無くなっていた。確かに休養明けという事もあったであろうが、捲りと言っても同じ捲りを得意としているマツリダゴッホのように他の馬を威圧するようなスピードがないため、このような流れになってしまうと自分の形に持ち込めず最後の直線に向いた時には勝負は終わってしまう。本番の菊花賞はスローになりやすく、チャールズにとっては歓迎する流れになりやすいが、京都は中山と違って上がり勝負となる。直線で一度先頭に立つというシーンはあるだろうが、ゴール前で末の切れる馬に屈する可能性は低くない。

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京成杯AH

夏競馬が終わりいよいよ秋競馬が開幕。しかしそんな決まりごとはどこ吹く風。競馬場には真夏を思わせるような日差しが降り注ぎ、まだまだ夏競馬の延長線上にあるそんなハンデ重賞・京成杯オータムハンデ。そんなレースを制したのは「中山マイル戦において不利」と言われる大外枠に入った桜花賞馬キストゥヘヴンだった。


~勝ったキストゥヘヴンは~

2年前にこのレースを制しているステキシンスケクンに、アーリントンCを逃げて制しているダンツキッスイ。朝日杯FSを絶好のスタートから逃げて押し切ったゴスホークケンなどが集まり、簡単にハイペースが予想できた今年の京成杯AH。

Blog243_3しかしダンツキッスイもゴスホークケンも近走不振。「2頭とも競馬に迷いがある。意外とシンスケクンが楽にハナを奪える展開もあるのではないか?そうなれば例年通り先行馬有利だろう」などと穿った見方をしてみたものの、蓋を開けてみればシンスケクンが立ち遅れてもやっぱりハイペース。しかも前半3ハロンを32秒8という、1200メートル戦でも速い超の付くハイペースなのだから驚かされる。こうなれば「中山マイル戦の外枠不利」などという枠順の有利不利など関係なし。大外枠からポンとスタートしたキストゥヘヴンと藤田騎手は、前半はやりあう先行勢を見ながら中団での競馬に徹すると、11秒9と、ペースの落ちた5ハロン目のところで外から捲るように前に進出。鼻につけた白くて浅いシャドーロールを上下させながら絶好の手ごたえで4コーナーを回り、最後の直線へ。さすがに開幕週で馬場の状態がよい中山競馬場。馬場の中目から内に進路を取って飛び出したレッツゴーキリシマの必死の抵抗にあうも、そこはG1馬。坂を登っても脚は衰えず、その切れ味でキリシマをきっちり競り落として完勝した。

Blog242今回の勝利は2006年桜花賞以来、実に2年半ぶりの勝利。この鮮やかな重賞勝利で「桜花賞馬復活」などと書かれることもあるが、もともと脚質的にスローで流れれば届かないだけで、不振に陥っていたわけではなかった。今後も安定性に関しては不安を残すものの、このようなタイプはハマれば牝馬限定戦も牡馬牝馬混合戦も関係ない。4勝のうち中山で3勝と、中山が大の得意。またペースが速くなりやすいマイル前後のレースが合ってはいるが、フラワーカップのフサイチパンドラ、桜花賞のアサヒライジング、京王杯SCのインセンティブガイ、そして今回のゴスホークケンと、彼女の末脚をアシストする馬がいる時はどんな競馬場でも距離でも軽視は禁物だろう。


~2着だったレッツゴーキリシマは~

父か母父にノーザンダンサーの血を持つ馬が得意なレース・京成杯AH。今年はこの条件に当てはまる馬が多くおり、結果として1着から5着までそのような馬達が占めたが、その2着を構成したのがメジロライアン産駒の3歳馬・レッツゴーキリシマ。

引っかかる面があるので今までは「逃げ」が基本戦法。確かに自分でレースを作れる強みはあるものの、それが逆に「自分でレースを作らなくてはいけない」という重荷ともなっており、厳しいレースの連続。3歳になってからは大きな舞台でそのプレッシャーと常に戦ってきた。しかし今回は、そのプレッシャーを玉砕気味に飛ばすゴスホークケンや、それに追随するダンツキッスイに譲り、彼らを見る形で離れた3番手~4番手で折り合う事に成功。各馬が仕掛け始めた3コーナー過ぎでも慌てず仕掛けをワンテンポ送らせ、直線に向いたところで満を持して追い出した鞍上の北村宏騎手の好騎乗も光り、最後の直線ではハイペースで脚の止まった先行馬達の間をスルスルと力強い脚で抜け出して先頭に躍り出た。残念ながら最後はG1馬の末脚に屈するう形となったが、古馬相手に休み明けでこれだけの競馬ができたのは非常に大きな収穫と言えるだろう。

Blog244朝日杯で2着になった事もあるように中山は本当によく走る。キングマンボと並び道悪巧者のメジロライアン産駒だが、道悪でなくてもパワーの問われるレースでは能力を発揮できる。そしてそのような舞台が中山に出現しやすいのだろう。ただし、問題は気性。今回はうまく折り合ったが、それが一夏越して成長した証なのか、ペースが速くてたまたまだったのかはまだ謎のまま。基本的に逃げ・先行馬はスローペースの方が有利だが、レッツゴーキリシマの場合、スローだと引っかかって自滅する可能性も捨てきれない。ペースの速い底力勝負の方が信頼度は高いだろう。

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皐月賞

圧倒的な強さを誇り日本の競馬界を席巻したサンデーサイレンス産駒がいなくなって2年目。重賞を勝った馬が次走で簡単に負けてしまうという日替わりヒーローの誕生が多く、重賞2勝馬がマイネルチャールズただ一頭という混戦状態で突入したクラシック第1戦目の皐月賞。こんな「どの馬が勝ってもおかしくない状況」の皐月賞を制覇したのは、積極的な競馬をしたアグネスタキオン産駒のキャプテントゥーレだった。


~勝ったキャプテントゥーレは~

Blog207逃げて好成績を収めてきたノットアローンに、スタート後に引っかかってしまうショウナンアルバなどなど、逃げる可能性のある馬はそれなりにいたはずだが、両陣営のレース前のコメントでは「ハナにこだわらない」や「折り合いはつけれる」など、あまりハナには拘っていない様子。それを踏まえた鞍上の川田騎手はスタートすると積極的に追って追って先手を主張してみる。するとノットアローンがスタートで出負けして行き脚が付かなかった事やショウナンアルバは折り合いに専念するためにフワッとスタートした事はあったものの、あっさりとハナを奪取できてしまった。こうなればシメたもの。キャプテントゥーレはそこからマイペースに落として1000メートルの通過は1分1秒7。例年の皐月賞と比べるとスローペースではあるが、良馬場発表も水分を含んだ力の要る馬場だった事を考えると平均ペースであったろう。それでも皐月賞にしては出入りが少なく落ち着いていた。この流れ味方につけたキャプテントゥーレは800メートル地点過からスパート開始すると、勝負所の4コーナーカーブに当たる残り3ハロン目を巧みなコーナーワークにより11秒2という最速ラップを刻んでアドバンテージを作る。最後の直線ではその差を縮める馬はおらず、2馬身半の差を保って優勝した。

上にも書いたけれど・・・、

途中でショウナンアルバが引っ掛かって上がっていくというハプニング(?)はあったものの、皐月賞にしては出入りの少ない競馬だった。重賞毎に違う勝ち馬が登場するため自分の馬がどの程度の能力があるのか把握できておらず、どの馬も「上手く競馬をする」という意識が強すぎたのかもしれない。このような状況であるから、自分の馬に自信を持ち積極的な競馬をした騎手・馬に勝利の女神がほほ笑むのは当たり前か。
Blog208
今年の皐月賞はどの馬にも勝つチャンスのある混戦であり、それ故に勝ったのは川田騎手の好騎乗の結果と考えがちだが、このような状況で上手く競馬ができるというのが強い馬というものを形成する一要因となるであろう事を考えると、キャプテントゥーレの皐月賞優勝は決して「展開の利と川田騎手のファインプレー」だけでは片づけられないだろう。距離不安で人気が落ちるようならばダービーでも積極的に買いたい・・・と言いたいところだったが、残念なことにレース後に骨折が判明。復帰は来年となる見込み。正直、この時期の骨折は痛いが、これを糧にもう一回り大きくなって帰ってきてほしい。


~3着だったマイネルチャールズは~

皐月賞と同じ舞台で行われる京成杯と弥生賞の勝ち馬。この他、同じコースで行われるホープフルSで優勝しており、世代随一と思われるコース適性と後ろから来た馬を抜かせない勝負根性、そして唯一の重賞2勝馬という実績を買われて堂々の1番人気に支持されたが、最後の直線では逃げたキャプテントゥーレを捕まえられず、内から伸びたタケミカヅチに足元を掬われて3着という結果に・・・。弥生賞のようにスローならば前で競馬ができるし、京成杯のようにペースが速ければ後ろで競馬ができるという自在性も売りだったはずも、レース後、鞍上の松岡騎手から出たコメントは「スローで動くに動けなかった」というニュアンスのものだった。考えてみればペースの違った弥生賞と京成杯もともにマイネルチャールズ自身は61秒後半というほとんど同じペースで1000メートルを通過している事から、両レースでの位置取りの違いは「自らが積極的に動いた結果」ではなく、「どちらも自分のペースを守って走った結果」だった可能性も。そう考えれば京成杯や弥生賞で受けた印象よりも柔軟な自在性はなかったのかもしれない。

Blog209が、昨年、惜しいところで栄光を逃し、今回は1番人気に騎乗するという鞍上の松岡騎手の心理状態を考えれば、他の騎手よりも「皐月賞を勝ちたい」という気持ちが大きかったであろう事が推測できる。それ故に少し大事に乗りすぎてしまったという印象も捨てきれないだろう。1年に1回。チャールズにとっては1生に1回しか走れない皐月賞。そのプレッシャーが馬の能力や状態だけではなく、騎手の心理にも影響を与える。競馬の奥の深さを垣間見た一戦だった。今後はダービーという事になるだろうがチャールズが末脚勝負に不安を残す事を考えると、今度こそ積極的にレースを進めなければ皐月賞よりも悪い着順になるだけ。皐月賞を取り逃して腹を決めた松岡騎手がどんな騎乗をするかに注目したい。


~14着に敗退したショウナンアルバは~

Blog210今後を見据えるという意味でトライアルから抑える競馬を試みていたショウナンアルバ。前走はそれが失敗して3着に敗退。しかし「スタートをフワッと出せば引っかからない」という事で、今回はそれを実行してレース前半は見事に折り合ったのだが・・・。アルバの「いつものように走りたい」という気持ちがそうさせたのか、3コーナーに差し掛かる一歩手前で我慢しきれずに暴走すると、その影響で見せ場もなく14着に敗れてしまった。引っかかると言ってもレース中ずっと引っかかるわけではなく、後半は必ず折り合う馬。それで今まで結果を出してきたことを考えると、クラシック第1冠である皐月賞という大舞台でアルバにとって未知数である「抑える競馬」をする必要があったのかどうか。レース後、鞍上の蛯名騎手から「湿り気の多かった馬場も向いていない」とのコメントがでていたが、それを差し引いたとしても今回の騎乗で馬の実力を完全に引き出せたかどうかは疑問であり、大敗の原因には「人間側がアルバを信じ切れていなかった」という面が大きく影響しているのではないか。

今後はダービーに向かうようだが、今回、抑える競馬をして結果を残せなかっただけに皐月賞よりも競馬が難しくなってしまったように思われる。ダービーではいったいどんな競馬をするのか。皐月賞を勝ったキャプテントゥーレが故障で離脱してダービーも混戦模様。ただ、混戦だけに自信を持って乗れば勝つチャンスは残っているはず。強い競馬を披露した共同通信杯と同じ舞台。皐月賞を教訓にダービーで結果を残してもらいたい。

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ダービー卿CT

中山得意のキングストレイルにニューイヤーステークスでマイルの適性を示したマルカシェンク。昨年のNHKマイルカップの覇者・ピンクカメオに、新馬戦で圧倒的な強さを見せて「遅れてきた大物」と話題になったオーシャンエイプスなどが出走した今年のダービー卿チャレンジトロフィ。そんなダービー卿チャレンジトロフィを制覇したのは中山のマイル戦では不利とされる大外枠に入ったサイレントプライドだった。


~勝ったサイレントプライドは~

中山のマイル戦は1コーナーの奥からスタートして外回りをぐるりと一周するコース形体。横に長い楕円形ではなく四角いブロックのような形をしている影響で入る枠が外になればなるほど他の距離よりも外をを回らされる可能性が高くなるため、枠順による有利不利があるいかんともしがたいコースである。そんな中山コースのマイル戦で大外枠に入ったがサイレントプライドだったが、スタート直後に誰も行こうとしないと見ると鞍上の横山騎手の好判断であっという間にハナを奪う。こうなると外枠不利は全く関係ない。マイル戦にしては超スローの59秒7というタイムで1000メートルを通過すれば、最後の直線でもそのアドバンテージを利用して危なげなく押し切った。

Blog203サイレントプライドはこれで重賞初制覇。能力のある馬だけに「ようやっと」という感が強く、だからこそ今後のレースぶりにも期待したい・・・と言いたいところだが、実は手放しで喜べないところも。それ今回のレースが低レベルだったという事に尽きる。なにせ勝ちタイムが1分34秒2である。第1回中山開催の後半からタイムが出にくくなっていた中山競馬場だったが、第3回3日目からBコースに替わった事により、3日目の3歳未勝利戦でスーパーウーマンが1分34秒5で優勝。4日目の6レースでは3歳500万下クラスのメスナーが1分34秒2で優勝しており、ある程度のタイムが出るようになっていた。確かにスーパーウーマンは走りすぎにしても、メスナーの勝ちタイムとサイレントプライドの勝ちタイムは全く一緒。歴戦の古馬達がしのぎを削るG3という舞台と3歳500万下とが同じタイムというのはいかがなものだろうか(メスナーのレースの1000メートル通過が57秒9だった事から、レース内容的にはメスナー達の走ったレースの方が濃かったとも言える)。このため、ダービー卿は直線に入ってもレースの花形である「直線の攻防」というものはほとんどなく、そのままゴールに雪崩込んだという形であり、ほとんどの馬が34秒台前半の上がりを使う、いわゆる「ヨーイドン」の競馬。馬券を買う側から言わせてもらえれば「1600メートルも走る必要はなかったのでは?」と思ってしまうほどだった。そんな中でペースを瞬時に判断してハナを奪った横山騎手とそれに応えたサイレントプライドは評価できるが、今回と同じメンバーでもコースが変われば結果は全く違ったものになる可能性が十分にある事を考えると、「今後を見据える」という前提の上で今年のダービー卿CTの「勝ち」にどれほどの「価値」があるかどうかは甚だ疑問である。

マイルの王者として君臨していたダイワメジャーが昨年末引退してさらに空洞化が進むマイル路線。だからこそ上へのぼりつめる好機なのだが、その好機を積極的に奪おうとするような、また自分から動いて奪えるような馬は今回のレースでは現れなかった。

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弥生賞

2歳王者のゴスホークケンが早々とマイル路線を歩むことを宣言。今年行われた3歳重賞でことごとく1番人気に支持された馬が敗退するなるなど、軸となる馬を未だに見極められない混戦を極めるクラシック戦線。そんな状態でトライアル・弥生賞を迎えたが、そんなレースを制覇したのは京成杯の勝ち馬であるマイネルチャールズだった。


~勝ったマイネルチャールズは~

スローを見越してのホッカイカンティが逃げる番手での競馬。勝負所まで上手く泳がせた後、最後の直線に入ったところで並びかけ、坂で競り落として堂々の先頭ゴールインを果たした。ゴール前にブラックシェルやタケミカヅチの猛追にあったものの、すでに大勢は決した後で完勝と言っていいだろう。確かに1000メートル通過が61秒8と弥生賞特有のスローペースと開幕2週目という先行有利な馬場状態は前で競馬をした馬に有利ではあったのは確かだが、それを味方につけられる自在性と混戦になればなるほど威力を発揮する勝負根性がチャールズの強み。これで中山の2000メートルは4戦して3勝2着1回。うち重賞2勝という内容は他の馬の追随をゆるさないものである事から、現時点で皐月賞のTRとしてスプリングSと若葉賞という2つのレースは残っているものの、今回のレースで皐月賞優勝候補のトップに躍り出たと言っていいだろう。
Blog196
今年初めてとなった第1回の開催から時計の掛る馬場状態が続いていたため、京成杯を勝ったあと心配だったのが「高速馬場になった時に対応できるか」という点だった。しかし、1か月の休養を挟んでも力の要る馬場状態は相変わらず。この後も開催が続くため弥生賞時よりも良くなるという事は無いだろうから、皐月賞までは高速馬場に対する心配はしなくていいだろう。その割に走る毎に勝ちタイムを1秒ずつ詰めており、勝ちタイムの2分1秒8は例年とほぼ変わりない水準。タイムからチャールズの成長の跡が見て取れる。圧倒的な強さを誇ったディープインパクトを例外とすると、近年の弥生賞の勝ち馬皐月賞で結果を残せていないのは心配だが、2000メートルとなった京成杯の勝ち馬として初めて弥生賞を制覇した事を考えると、そんな心配も杞憂に終わるか。


~2着だったブラックシェルは~

Blog194_2前回のきさらぎ賞では1番人気に支持されるものの、スタートで出遅れると終始大外を回って7着。しかし今回は中間に行ったゲート練習が功を奏し、スタートも上手く決めて中団で脚を溜めると、メンバー最速タイの34秒6という末脚を繰り出して2着を確保した。これで皐月賞の権利も獲得して本番に備えることになるが、マイネルチャールズには今回の弥生賞と昨年末のホープフルSと2度顔を合わせて2敗。クロフネ産駒らしく見た目で「パワーがあるな」と分かるほどムキムキの馬体だが、そのパワーがスローペースでは逆にオーバーフロー気味となり勝負所でキビキビ動けず、前で競馬のできるマイネルチャールズに出し抜かれている要因となっているように思われる。それゆえ本番ではもっとペースが速くなること、また先行有利の馬場ではなくなっていることはブラックシェルにとってプラス要素。武騎手は大得意の弥生賞に比べると皐月賞での成績は一息だが(あくまでも弥生賞に比べて)、ナリタタイシンやエアシャカールのように弥生賞で2着に負けた馬を本番で優勝させている例もある事から、今後を考えると「今回は勝たなくて良かったのではないか」と前向きに考えたい。相手は強いが、これらを味方に付ければ本番での逆転は十分に可能だ。


~12着だったフサイチアソートは~

Blog195_2前走の東スポ杯では後に重賞を賑わす馬達を退けての快勝。レース後は獲得した賞金から休養に入ったが、休養中に負かした相手が重賞で好走するのに比例して評価が鰻の如く上って行ったフサイチアソート。そんな評価を背に今回の弥生賞で満を持しての出走となったが、スタートからゴールまで良いところなく12着に沈んだ。蓋を開けてみれば体重は前走からプラス2キロという僅かなもの。500キロを超える馬が多数を占める今の競馬の中で弥生賞出走馬は500キロ未満の馬が13頭。その中でもアソートの446キロはひときわ小さく映った・・・というよりも貧弱に映った。話によると「当たり負けして位置取りを悪くした」とのことで、休養中に肉体的に成長できなかったのはいろいろな面で深刻。東スポ杯は厳しい流れを追走して馬群を割ってきた事を考えると今回のペースはアソートには向いていなかったのは確かだが、トライアルとしてもう少し格好をつけておきたかったというのが本音だろう。関係者としてもこの惨敗は誤算なはず。賞金的には足りているため本番に直行することもできるが、直行するにしても巻き返しに向けての調整は大変難しいと思われる。

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中山記念

春競馬の開幕を告げる伝統のG2・中山記念。過去に好走したことのある馬が好走するリピーターレースとして有名で、1番人気には2005年に4着、昨年2着という成績があり、7歳にしてAJCCを制覇して勢いに乗るエアシェイディが指示されたが、優勝したのは2005年に2着、2006年に4着という成績のあるカンパニーだった。


~優勝したカンパニーは~

Blog184当日購入した新聞に載っていた手綱を取る横山騎手の「行こうと思えば行けると思う」という談話。今までのカンパニーの姿から話半分で頭に入れておいたのだが、スタートするとその談話通りに押して押しての先行策。スタート地点から150メートル地点にあるゴール板を過ぎたところで行き脚がつくと2コーナーのカーブを出る頃にはハナに立ったコンゴウリキシオーの番手に位置取る。1000メートルの通過は59秒7。開幕週にしては遅い流れでも嫌々せずにしっかり折り合うと、勝負所でへばったコンゴウリキシオーを馬なりで交わして最後の直線へ。坂の下では勝負所から捲って勢いに乗るエイシンドーバーに詰め寄られたものの、坂を上ったところで逆に突き放すと、最終的に1馬身と4分3の差をつけて優勝したのだった。

Blog187_3確かにカンパニーは自慢の末脚を武器に天皇賞で3着になったりマイルCSで4着になるなど、G1でも好勝負できる能力の持ち主ではある。しかし、その反面、良さを活かそうと末脚を温存するとG2やG3の格下相手でも3~4着どまりという〝煮え切らない馬〟だった。それがまさかこうも簡単に先行して、こうもあっさり優勝するとは・・・。例え横山騎手が先行しようとイメージしたとしても、馬の気性や能力から実際のレースで考え通りに事が運ぶのはなかなか難しい事から、今回はそれに応えてみせたカンパニーを褒めなくてはいけないだろう。今後のローテーションは調子次第も、春は安田記念が目標の様子。絶対的な王者がいなくなったマイル路線。7歳にしてG1奪取という可能性も低くはない。ただ、小回りで直線の短い中山のコースでこのような競馬ができてしまうと、逆に広く直線の長い東京コースでの競馬が難しくなった可能性もなくはない。


~3着だったエアシェイディは~

最初に書いたように、中山記念は過去に好走した馬が再び好走するリピーターレースであり、特に2200メートルで行われるオールカマーやAJCCで好走しているような馬が強い。今まで先行すれば末が甘くなり、追い込めば届かないもどかしいレースが続いていたものの、それを克服するための陣営の試行錯誤と馬自身の成長から捲りを打てるようになり、7歳にしてAJCCを制覇したエアシェイディ。中山記念においても過去に4着・2着と良積がある事から、今回は鉄板だと思っていた。いたのだが・・・。

Blog186_2しかしスタートすると終始ラチ沿いを走る。鞍上の後藤騎手の頭に「開幕週で内ラチ沿いが良好な馬場であり、外に出すと距離損をする」という事が強く印象に残っていたのか、3コーナーを過ぎても外に出さず、それが裏目に。勝負所では加速する先行勢についていけなくなったレオエンペラーやロイヤルキャンサーが前を塞ぎ、外からはトラストジュゲムに被されて直線で馬群がバラけるまで動くに動けず。こうなると勝負事とは面白いもので、馬群がバラけてようやく追い出せた直線でも坂の途中で少し外にヨレたプリサイスマシーンを交わすために体勢を立て直さざる得なくなるなど、やる事なす事が後手後手に。結局、ゴール前で鋭く追い込んだものの、2着のエイシンドーバーさえも交せず3着という結果。東京や中山コースでは安定感のある後藤騎手にしては、久しぶりに「やってしまった」という騎乗だったのではないだろうか。今回は力負けではないだけに巻き返しを期待したいが、こちらもカンパニーと同じく、東京などの大きなコースになると仕掛けどころ、脚の使いどころが難しいか。
Blog185

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アメリカJCC

昨年の優勝馬マツリダゴッホが有馬記念を勝ったことにより例年よりも注目度が上がったアメリカJCC。今年は転厩初戦となったドリームパスポートや、万葉Sでまだまだ力のあるところを見せたトウカイトリック、中山金杯で復活の兆しを見せたメイショウレガーロなどが出走したが、優勝したのはエアシェイディだった。


~勝ったエアシェイディは~

Blog172前走の中山金杯では超の付くスローペース。エアシェイディには向かない展開になってしまったものの、鞍上の後藤騎手がそれを見計らって道中徐々にポジションを上げていく味な競馬。結果は一皮むけたアドマイヤフジを捕らえきれずに2着になってしまったが、スローでも対応できるところを見せ、幅のある競馬ができるようになったと知らしめた。そして返す刀で出走した今回のアメリカJCC。ダービー以降、スローで逃げれなくなってしまったアドマイヤメインが出走していたためどれだけ速いペースになるのかと考えていたが、ふたを開けてみれば1000メートルの通過は1分1秒2という案外な数字・・・・・。エアシェイディはそんなペースでも前走と同じように、最初は中団から競馬を進めると、勝負所までに徐々にポジションを上げていき、4コーナーでは5~6番手という前走と似たような形に持ち込む。最後の直線では狭いところに入ったにもかかわらず怯むところなく豪快に伸びて優勝したのだった。

Blog174_3今までは前で競馬をすれば末が甘くなり後方で競馬をすれば届かないという、いかんともしがたいレースが続いていたが、金杯やAJCCで見せた競馬ならばペースに柔軟に対応できるほか、仕掛けが遅れるようなことは少なくなる。上で「アドマイヤメインがいるのに1000メートルの通過は案外な数字」と書いたが、アドマイヤメインが12着、シルクネクサスが8着、メイショウレガーロが15着と、前々で競馬をしていた馬達がどれも掲示板に載れなかった事を考えると、数字的にはスローでも力のいる馬場の影響で非常に厳しいレースだった事が推測できる。それをあのような競馬で抜け出せるのだから「シェイディは完全に自分の競馬を確立した」と考えても良いだろう。適正距離の問題があるのでAJCCを制覇したからと言って昨年のマツリダゴッホのように有馬記念も・・・とは言えないが、次走の予定である中山記念はもちろん、出走すれば第3回の日経賞、そして第4回のオールカマーなどなど、中山競馬場で行われる中距離重賞を総ナメにできそうな雰囲気すらある。


~2着だったトウショウナイトは~

休養後、先行するも結果が残せずスランプに陥っていたトウショウナイト。しかし今回は道中1番人気のドリームパスポートをびっちりマークして徐々にポジションを上げていく「捲り」を打って2着を確保。ようやく復活の兆しを示した。惜しむべきは最後の直線。いざ追い出した時に瞬発力勝負で遅れをとり、ワンテンポ置いてスピードに乗ったところで先に抜け出した前にいたドリームパスポートとブラックアルタイルに挟まれてしまった。あれがなければわどい勝負になっていただろう。ただ、それでも走るのをやめず、もう一度馬群に突っ込み、間を割って伸びたのは歴戦の古馬の風格といったところか。

Blog175今回の好走の要因としては一昨年のアルゼンチン共和国杯を優勝した時と比べて20キロほど増えていた馬体が10キロ減っていた事、別定戦だった事、スタミナの問われる中山の2200メートルというコースだった事、芝コースが全体的に力のいる馬場状態であった事などが挙げられる。ティンバーカントリー産駒の割に一瞬の瞬発力もあるため流れが落ち着きやすい京都競馬場でも走る馬だが(好走するも勝ち切れないが)、今回のレースでの反応などを見ると歳を重ねてズブくなっている可能性があり、距離やペースなどの適性が以前よりも「スタミナの問われる中・長距離で、なお且つ上がりの掛るレース」という明確な条件へとシフトしている。この事から馬券で勝負する際はレース条件をより詳細に見極める必要があるだろう。同じようなレースになりやすい日経賞に出走すれば今年も安定した力を出してくれるはずだ。


~5着だったドリームパスポートは~

松田博厩舎から稲葉隆厩舎に転厩した初戦。メンバー構成からいって厩舎としても絶対に勝ちたい一戦だったと思われるが、結果はファンや厩舎の期待に添えない5着となってしまった。この結果から、有馬記念で見せた落馬寸前の状態から盛り返しての6着を考えると非常に物足りない内容のように思えるのも確か。また、有馬記念から10キロ増という数字から「転厩による環境の変化や調整の違いが影響したのでは・・・?」と思えるのも確かだが、実際のところは「力のいる馬場とレースの流れが向かなかった」というのが一番大きな要因だと考えている。AJCCというレースはスローに流れやすい事やコースの形状から先行馬の活躍が目立つレースである。今回も前半の1000メートル通過は61秒2というペースになった。しかしそれにもかかわらず先行勢が軒並み撃沈。
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中山のコースで結果を残していないアドマイヤメインには目をつぶるとして、このコースで大崩れのないシルクネクサスが8着になっている事や、スローだった中山金杯で見せ場のあったメイショウレガーロが15着と惨敗している事から、今年のAJCCは数字には表れないタフなレースだったであろう事が推測できるだろう。そんなレースで他の有力馬にびっちりマークされながらも先行したあげく、早めの仕掛けであそこまで踏ん張れば実力を出し切ったと言えるのではないだろうか。距離に関しては守備範囲が広く、3000メートルを超える菊花賞や阪神大賞典で連対しているが、勝ちパターンだったメイショウサムソンを後ろからなでぎった神戸新聞杯のパフォーマンスを見ると、速い流れの2000メートルがベストだろう。距離は短いが芝の状態が良い開幕週に行われる中山記念に出走してくれば、完成形となったエアシェイディに雪辱できるチャンスは十分にある。

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京成杯

施行距離がマイルから2000メートルに変わって9年。変更当時は同じ距離・同じコースで行われる皐月賞との相性はそれほどでもなかった京成杯だったが、ここにきてシックスセンスやサンツェッペリンなどの連対馬が本番でも好走するようになり重要度も増してきた。そんな今年の一戦を制覇したのはマイネルチャールズだった。


~勝ったマイネルチャールズは~

新馬戦から前走のホープフルSまで先行抜けだし策だったが、今回は京成杯にしては珍しく前半1000メートルは61秒を切るペース。この流れを鞍上の松岡騎手が読み、道中は末脚温存の中団からの競馬。その温存していた末脚を各馬が一斉に動き出した3コーナー過ぎ開放したものの、なかなかスピードに乗りきれず4コーナーでは前を行く馬との差を詰めることができない・・・ようにも見えたが・・・Blog168
外から捲ってきたアイティトップを見て闘志点火。直線に入ると、そのアイティトップを噛みに行ったような口向きでぶつかりながら一緒に伸びる。その直後に一瞬、内に刺さったステルスソニックに進路をカットされそうにもなったが、ステルスソニックがすぐに外に膨らんだことによりできた狭いスペースを突き、そこを伸びて1着となった。

Blog169_3馬インフルエンザにより例年よりも使いだしが遅くなり、まだまだ本命馬を定められない今年のクラシック戦線だが、マイネルチャールズは暮れのホープフルSで後に福寿草特別を圧勝するブラックシェルを押さえて勝利したこと、また、初重賞挑戦となった今回の京成杯を優勝したことで胸を張ってクラシックに挑戦できる実績を残したと言えるだろう。目の覚めるような末脚や他の馬を圧倒するようなスピードなど派手なインパクトはないが、レースに行っての勝気な勝負根性は世代でもトップクラスだと思われる。2分2秒9という勝ちタイムが昨年の2分1秒6というタイムに比べて遅いためその点を心配する声もあるが、同じ日の12Rに行われた古馬1000万下のレースで2分2秒1と0.8秒差。昨年の東雲賞が2分0秒9で京成杯との差が0.7秒である。今年の第1回中山開催は全体的に例年よりも時計が掛っていた事を考えると悲観するものではない。逆に1000メートル通過が60秒8という皐月賞とできるだけ近い流れになったことにより、ステップレースとしては大きな意義があったとのではないか。同じ距離・同じコースで行われる皐月賞では侮れない存在となったはずだ。

課題と言えば、末脚勝負となると分が悪くなるところだろうか。スローならば前でも競馬ができるので鞍上の松岡騎手がレースにおけるペース判断さえ間違えなければ大崩れはしないとは思われるが、馬場が整備されてスローの上がり勝負となった場合や逃げた馬と馬体を合わせられなかった場合、葉牡丹賞のように前を捕えられないという恐れもある。また、ヤヤ重のホープフルSを勝っているものの跳びが綺麗なので上滑りするような馬場は良くないとの話。クラシックまでにどれだけ成長するか楽しみな面も多いが、まだまだ未知数の部分も多く残している。


~2着のベンチャーナインは~

Blog171今回も道中は死んだふりで勝負所の4コーナーでもまだ最後方。しかし直線に入って外に出されると矢のような伸びを見せ、わずか300メートル弱で14頭をごぼう抜き2着を確保した。今回を含めて5戦した中で最速の上がりを記録しなかったのは先行した萩ステークスのみという末脚の持ち主だが、中でもその破壊力を見せつけたのは上がりタイム2番手のエイワヒデタダの34秒1を0.7秒も上回る33秒4というタイムを叩き出した新馬戦だった。ただ、当たり前だが溜めないと溜まらない。つまりそれ以外の競馬をしてしまうと良さは出ないわけで、当然スローな流れになったり、G1レースのような強い馬がたくさんいるレースでは惨敗するケースも多くなる。まさに名前の通り、人気馬には難しい大胆な騎乗を余儀なくされ、競争成績もベンチャー企業並みに乱高下するが、ハマった時は必ず追い込む頼りがいのある穴馬である事は間違いない。前走好走したからと言って手放しで飛びつくと痛い目を見るが、近走不振でもペースが速くなりそうなレースなら思い切って勝負をしたい。


~3着だったアイティトップは~

Blog170シーザリオが勝って注目度の高くなった3歳500万下の寒竹賞の今年の勝ち馬。今回は1番人気のマイネルチャールズをマークする形で競馬を進めたものの、馬自体が少々気負って2コーナーで少し掛り、向こう正面半ばでも少し持っていかれ加減。その割に勝負所の3コーナーでペースが上がると置いていかれ気味になったため今度は鞭を打ってゴーサインと、ちぐはぐな競馬。それでもCコースの割に外が伸びない今開催で終始大外回った上に伸びて〝あわや〟を演出。3着に入った。惜しむべきは坂の頂上あたりで一瞬、脚が鈍ったところ。そこをベンチャーナインに突かれてしまい2着を逃したが、3戦目、しかも重賞初挑戦という事を考えれば、好走理由は「流れが向いたから」という単純なものだけではないだろう。次走は皐月賞トライアルの弥生賞との話。しかし折り合い面や脚質からもスローになりやすい弥生賞よりもペースが速くなりやすい皐月賞の方が怖い。ただ権利を取らないと出走できないので、弥生賞で目立たずに3着に入って本番に臨んでくれる事を願いたい。

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中山金杯

競馬ファンにとっては一年の計は元旦に・・・ならぬ金杯にあり。今年から始まった通常の払戻金に売上の5%相当額上乗せされるという「JRAプレミアム」により、近年の皐月賞クラスの入場人員数である7万5000人を超える人が駆けつけた第1回中山競馬初日の中山競馬場。そんな10年前の活気を取り戻した中山競馬場で行われたメインレース・中山金杯を制覇したのはアドマイヤフジだった。

~レースは~

ゲートが開くと西に傾きかけた日を浴びた各馬は揃ったスタート。それぞれが相手の出方をけん制しつつポジションを探っていると、「それならば」と内からメイショウレガーロ先手を主張。これにトウショウナイトが続き、その外からアドマイヤフジ。その後シルクネクサス、フサイチホウオー、サイレントプライド、カオリノーブル、トウショウヴォイス。タイキヴァンベール、グラスボンバー、ブラックタイドが続き、後方からエアシェイディ、アサカディフィート、ヤマニンアラバスタ、ヒラボクロイヤルという形で1コーナーから2コーナー、そして向こう正面へ。しかし、カーブ手前で各馬のポジションもある程度決まった事によりカーブでグっとペースが落ちつき、1000メートルの通過は平均を下回る1分2秒というスローペース。これにフサイチホウオーが我慢しきれず鞍上の鮫島騎手と喧嘩。また、後方にいたタイキヴァンベールも「やってられん」と内をついてスルスルと中団へ。それに隠れてジワジワと好位につけるエアシェイディ。
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それでも全体としては動きのないゆったりとした流れを維持して3コーナーへ。ここでようやくペースが上がるが、その中でも一番先に仕掛けたのがアドマイヤフジ。鞍上川田騎手が手綱を動かすとすぐさま反応。4コーナーで先頭を行くメイショウレガーロに早々と並びかけると、最後の直線では坂の手前でメイショウレガーロを競り落とし、追いすがるエアシェイディを退けて先頭ゴールインとなった。


~優勝したアドマイヤフジは~

Blog163中山コースでは5戦して0勝。しかし鞍上の川田騎手の前走の教訓から今回は位置取りも仕掛けもすべて早め早め。これでレースのイニシアチブを握って勝利をもぎ取った。末の切れる馬なので、どうしてもその特性を活かそうと後方からの競馬が多かったアドマイヤフジ。しかしこれだと展開に左右されるため、大負けも少ないが好走するもあと一歩届かずというのも多くなる。特に直線の短い中山コースでは乗り難しくその傾向が強かったのだが、そんな苦手であろうコースでの重賞制覇は「スローでもしっかりと折り合って競馬ができるんだゾ!」という強いアピールになったことは間違いなく、新たな境地を開拓したといえるだろう。

こういう馬が自在性を身につけると怖い・・・が、そもそも闘ってきた相手はシーザリオやディープインパクト。本来ならハンデ戦のG3などに出ている馬ではないのだ。500キロを超える馬体だがこれと言って背が高いわけではなくお腹もボッテリと映るため、パドックでみるとあまり印象は良くない。が、走る姿はバランスがとれて綺麗に映るから不思議。今年で6歳も、年の割にそれほど走っていないので急に萎むような事もないハズ。今年はアドマイヤフジにとって飛躍の年になりそうだ。


~2着になったエアシェイディは~

Blog164_2中山の2000メートルは4コーナーの奥からのスタート。この影響でポジション争いがホームストレッチでおこなわれるため、ペースは平均かそれよりもやや速くなることが多い。例年の中山金杯の場合、1000メートルの通過は大体60秒前後の平均ペースが一般的だが、それでも馬場が荒れていたりCコースで行われることもあり、最後の直線では追い込み馬が台頭する。しかし今年の場合、これと言って逃げる馬がいなかった事もあり1000メートル通過は1分2秒と超スロー。後ろから競馬をする馬には不利な流れとなってしまった。エアシェイディもそんな不利な流れにハマった1頭だが、鞍上の後藤騎手がスローを見越して道中徐々にポジションを上げていく会心の騎乗で、4コーナーでは先行馬を射程圏内に入れた5~6番手という絶好位。それでも勝つまでには至らずの2着は相手が強かったと認めざる得ないだろう。気になるのはいずれ回ってくると言われる順番がいつなのか。次走はAJCCとの事だが、AJCCは先行馬が強いレースなので、スローでこのような競馬ができた今回のレースが初の金星ゲットの前振りレースとなるか。

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有馬記念

競馬のレースながら暮れの風物詩として競馬ファンのみならず、普段は競馬を嗜なまない人まで興味を持つレース・有馬記念。1週間前の天気予報は生憎の雨予報だったものの、熱心な競馬ファンの祈りが通じたのか土曜日の夕方からの少し早い降り出しにより、当日の朝まで空を覆っていた重たい雨雲も嘘のように吹き飛んでレースを迎えることができた。しかし、肝心の競馬の結果まではそうはならず。有馬記念を勝ったのは、今年AJCCとオールカマーを制覇し、日経賞で3着になっている中山巧者のマツリダゴッホ。最後の最後であっと言わせる大波乱を演出してターフを駆け抜けた。

~レースは~

スタートすると、いつも通り楽な手ごたえでダイワスカーレットが抜け出すが、外から何が何でもハナを奪うという執念のシゴキに応えるチョウサンがこれを交わして先頭へ。それを見るように内からマツリダゴッホ、外からサンツェッペリンが先行集団を構成。その後、少し離れてデルタブルース、コスモバルク、ダイワメジャーが続けば、ロックドゥカンブ、ポップロック、好スタートを切ったウォッカはすぐに下げてこの位置。押しても押しても前に進まなかったメイショウサムソンもここ。その後にハイアーゲーム、インティライミ、レゴラス、1頭離れた最後方にドリームパスポートという形で大歓声のホームストレッチ、そして1コーナーを回って2コーナーへ(写真は1週目の4コーナー)。
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1000メートル通過は1分06秒。馬場を考慮すると少し早いペース。その後、それまではほとんど動きがなかったが、仕掛けどころの3コーナーに入ると各馬の手綱が動き出す。内から抜群の手ごたえでダイワメジャー。ウォッカ、メイショウサムソンは外から先頭に取り付こうとする。しかし既にカーブの途中。内と外の距離差などにより追えども追えども先行集団との差は詰まらず、先頭集団に目をやればダイワスカーレットがチョウサンに並びかけると、その内からマツリダゴッホが襲いかかる。そうこうしているうちに直線に入ると、野獣のようにエンジンの掛ったマツリダゴッホが後続を突き放し、最後の急坂でさらにその差を広げるとスタンドから沸き起こる「エェー」という歓声に迎えられてゴールイン。結局、最後まで食い下がったのはダイワスカーレットのみ。その他の後続はなすすべもなくマツリダゴッホの前に敗れたのだった。


~優勝したマツリダゴッホは~

スタート後、軽く押してダイワスカーレットの直後につけると、あとは「いつ先頭に躍り出ようか」と虎視眈々。勝負所の3・4コーナーでは各馬の手綱がしきりに動く中を手綱を持った抜群の手ごたえで回り、先に先頭に躍り出たダイワスカーレットをあっという間に交わし去れば、直線では後続にまともな競馬をさせずに堂々の先頭ゴールイン。

Blog159_2そもそもマツリダゴッホ自身、返し馬からして他の有力馬とは違っていた。有馬記念のスタート地点は外回りコースの終わりにあり、輪乗り地点は向こう正面にある。このため、本馬場入場後は輪乗り地点までホームストレッチを通っても1コーナー側に走ってもそれほど大差はない。例年ならば出走馬のうち半々ぐらいで1コーナー側とホームストレッチ側に分かれるのだが、今年の場合は返し馬でホームストレッチを走ったのはたったの3頭。その少なさは4コーナーでカメラを構えていた報道関係の人たちが「エーッ」と声を上げるほど。しかし、その返し馬をホームストレッチで行った3頭の中にマツリダゴッホがいた。返し馬で1コーナー側へ行ってしまった馬達は「ホームストレッチの大歓声により引っかかる可能性がある」など、「何か少しでも不安な部分を抱えていてホームストレッチを走らなかったのではないか」と勘ぐれば、ホームストレッチで堂々と返し馬をしたマツリダゴッホはいつものような平常心で競馬を迎えることができた、また、ジョッキーも関係者も自信を持って送り出したという証明になるのではないだろうか。

確かにマツリダゴッホは中山巧者ではあるが、よくよく考えればこの日はゴッホの手綱を取った蛯名正義デーだった。有馬記念をはじめ、ハッピーエンドカップ、グッドラックハンデ、2歳新馬戦、そして最終レースと大暴れ。この日行われた芝のレースのほとんどを勝った彼のレース後のコメントを雑誌で見返してみると、常に馬場状態を考慮しながら騎乗していた事がわかる。馬の状態の良さももちろんあるが、当日の馬場を熟知していた鞍上の好プレーも光ったと言えるだろう。それにしても、AJCCではヘンテコなペースを作り出したインティライミのアシストによる展開の利が大きかったこと、日経賞では勝ちパターンだった所を最後の最後でネヴァブションに豪快に差し切られたこと、オールカマーはG2の割にメンバーが手薄で格の落ちるシルクネクサスとの叩きあいと、それほど凄みを感じさせなかった本馬が暮れの大一番でこの凄味。有馬記念というタイトルを獲得したことにより、来年は挑戦する立場から挑戦者を迎え撃つ立場に変わるが、今までG1では少し足りなかった馬がタイトルを取った事でガラリと一変する事もある。とにかく有馬記念の強さがフロック出なかったことを証明してもらいたいものだ。


~ファン投票1位に支持されたウォッカは~

Blog160好スタート後、すぐに中団まで下げたが、直線の短い中山コースという事でいつもより前に位置取りし3コーナー過ぎから仕掛ける。しかし、前との差は詰まらず。直線も見せ場なく11着に大敗してしまった。この原因として大外枠に入るという枠順や有馬記念に向いていない追い込みという脚質、その切れを殺すヤヤ重の馬場というもあるだろうが、少し仕掛けが中半端だったのではないだろうか。有馬記念は各馬3コーナーから仕掛け始める。それと同じように3コーナーから仕掛けた場合、進路を外に取ると外を回らされて余計なスタミナを使った揚句に前との差を詰める事ができない。人気馬という事もあり勝負所で闇雲に内に突っ込み前が詰まるのは許されないため、外に進路を取ったのは問題ないとは思うが、外に進路を取るならば3コーナーに入る前にもっと前に付けていなければならなかった・・・。

思えば64年ぶりにダービーを制覇を達成した偉業以降は勝ち星に見放されている。「強い・弱い」という問題よりも、柏木集保氏も言っていたように、ダービー後はリズムがズレてしまっているよう。このリズムを戻すため、来年はどんなローテーション、競馬をするのか。輝きを取り戻すためならば、時には思い切った決断も必要かもしれない。

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